投稿リポート
石垣島・名蔵湾における
マングローブ植林
沖縄県・八重山ライオンズクラブ
#環境保全

八重山ライオンズクラブ(高木正敏会長/53人)は、約40年前から石垣島の名蔵湾を中心にマングローブの植林活動を続けてきた。土地改良事業などによる赤土流出で、かつて白く美しかった浜が失われつつあったことが活動の原点である。当初は台風の影響や潮の干満により苗の活着が進まず苦労したが、研究者の指導により植栽位置や植え込みの深さを改良し、活着率は大幅に向上した。長年の取り組みは地域に根付き、名蔵湾の環境を守る基盤づくりに寄与してきた。

こうした背景の下、2023年5月には「石垣島の環境を未来へつなぐ」をテーマに環境シンポジウムを開催した。シンポジウムでは専門家が登壇し、マングローブ林の役割として、①高潮・津波から地域を守る防災機能、②地上部・地下部に大量の炭素を蓄える気候変動対策としての価値、③生物多様性の保全、④赤土流出を抑え海の透明度を守る機能などを具体的に解説した。参加者からは「名蔵湾の環境変化を日常的に感じている」「次世代のために植林の重要性を理解した」など多くの意見が寄せられ、地域全体で環境を考える契機となった。
更に、名蔵湾周辺住民を対象としたアンケート調査も実施した。調査では、環境保全への意識、名蔵湾の自然への期待、植林活動の評価などを尋ねた。回答の多くは「赤土流出を減らす対策の強化」「子どもが参加できる環境教育の拡充」「継続的なマングローブ植林の実施」など前向きな意見が中心で、住民の環境意識の高さが裏付けられた。また、マングローブ林の再生が観光振興に寄与する点も評価され、環境と地域経済の両立への期待が高まっていることが示された。

八重山ライオンズクラブはこうした地域の声と、環境問題の国際的な潮流を踏まえ、駐日アラブ首長国連邦大使館、特定非営利活動法人国際マングローブ生態系協会、INPEX・JODCO財団と連携し名蔵湾での共同植栽を進めている。2022年の第27回気候変動枠組条約締約国会議(COP27)でアラブ首長国連邦が提案し、日本を含む17カ国が賛同した「マングローブ林保全・再生」国際イニシアチブを具体的に実践する取り組みでもある。
共同植栽は2023年11月の第1回で130本、2024年9月の第2回で600本、そして今回の第3回で500本と、累計1,230本に達した。植栽にはアラブ首長国連邦のシハブ・アフマド・アル・ファヒーム駐日大使ら4人、八重山農林高校グリーンスキル科の27人を含む約60人が参加。アル・ファヒーム大使は「マングローブ植林は海洋保全に直結する重要な取り組み。自然豊かな石垣島で再び活動でき光栄」と述べた。参加した高校生からは「アラブの方々と協力して植林できたことは貴重な経験。活動を後輩に引き継ぎたい」と前向きな声が上がった。

八重山ライオンズクラブは、40年にわたる活動の積み重ねと国際機関との連携を力に、名蔵湾の自然を未来へつなぐ環境保全活動を今後も継続していく決意である。
2025.12更新(GATエリアリーダー/識名安信)
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