獅子吼
未来の命を守るための挑戦
若年層への意識啓発
池田和弘(大阪府・東大阪菊水LC)

献血、そして骨髄ドナー登録。
これは血液疾患や重篤な病と闘う患者様にとって、文字通り「命そのもの」です。
しかし今、日本は大きな課題に直面しています。
献血は提供者の高齢化と少子化の影響により、将来的な供給不足が現実味を帯びています。
骨髄ドナー登録も同様に、重要性は知られつつも、移植を待つ患者数に対して登録者が圧倒的に不足しています。
つまり今、「命を救えるはずの機会」が、静かに失われつつあるのです。
この問題を本気で解決するなら、対症療法ではなく、未来の担い手へアプローチすべきではないか?

そこで、東大阪菊水ライオンズクラブは、大阪府赤十字血液センターとNPO法人関西骨髄バンク推進協会の協力の下、中学生・高校生を対象とした啓発セミナーを実施しました。
本事業の最大の特徴は、「イベント」ではなく、学校の正式な「授業」として実施したことです。
単発の呼びかけでは終わらせない。
確実に、そして平等に、若年層に届ける。
そのために、地域との信頼関係を生かし、教育現場と連携し、授業枠を確保しました。
伝えたのは、制度の説明だけではありません。
命の尊さ。
支え合う社会の本質。
自分が誰かの「希望」になれるという事実。
「知って終わり」ではなく、
「将来、行動できる自分になる」ことをゴールに据えました。

結果として、中学校1校、高等学校6校、合計836人が受講。
しかし本当に重要なのは人数ではありません。
セミナー後のアンケートでは、
「初めて正しく理解できた」
「献血に協力したい」
「年齢に達したらドナー登録を前向きに考えたい」
という声が多数寄せられました。
更に、実施校での献血実施時には例年と比較して提供者が増加。
「意識」が「行動」へと変わった瞬間でした。
若年層への教育という最も本質的なアプローチを選んだからこそ生まれた成果です。
そしてもう一つ、強調したい点があります。
本事業の事業費は0円です。
私たちが持っていたのは、人と人との信頼関係、そして「命を守りたい」という強い意志だけでした。
人的ネットワークと関係団体との協働により、836人への直接啓発という大きな社会的インパクトを創出。
しかも、実施校からは継続開催の要請、他校への紹介、献血バス派遣依頼など、活動は確実に広がりを見せています。
これは単年度で終わる事業ではありません。
再現性があり、拡張性があり、持続可能性を備えたモデルです。

今日理解した一人の中学生が、数年後に献血に協力するかもしれない。
今日心を動かされた一人の高校生が、将来、骨髄ドナー登録をするかもしれない。
そしてその一人が、どこかで待つ一人の命を救うかもしれない。
私たちがまいた種は、今すぐ花を咲かせるものではありません。
しかし確実に、未来の医療を支える土壌を育てています。
この事業は、「今」の成果だけを追った活動ではありません。
「未来の命」に対する責任から生まれた挑戦です。
私たちはこれからも、若年層への本質的な意識啓発を通じて、命を守る文化を育て続けます。
(2025-26年度ゾーンチェアパーソン/2013年入会/61歳)
2026.03更新

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