獅子吼
薬物乱用防止教室
2万人を突破
森 一男(北海道・サッポロシニアLC)

「薬物をやろうと思っていた。今日、森さんの話を聞いて、やめることにした」
サッポロシニア ライオンズクラブが、2010年に初めて開いた薬物乱用防止の出前講座。札幌市中心部の小学校に通う6年生の男子児童2人が、感想文に書いた。ショックだった。12歳の子が、汚染されようとしている。市内の小学校約200校全部で、薬物教室を開くべきだとの思いにかられた。
開催校の開拓に奔走した。自分の子どもが通った母校や近くの小学校に足を運ぶ。「うちの子どもたちは、薬物とは無縁ですよ」と、関心がない校長もいた。「今の子どもは、分かりませんよ」と、ハッパをかけた。
地道な努力が実を結ぶ。最初の年の10年は2校、11年には6校、12年には8校と増えた。校長は2年もすると異動する。追っかけて開催を呼びかけた。大きな転機になったのは2015年。札幌市教育委員会が「薬物教室は、年1回開催するように」と、小中高校に通達を出したことだ。校長も断りにくくなった。15年度は13校、17年度は14校と増え、24年度には23校になった。
小学6年生の児童数は、マンモス校なら180人、特認校は12人と少ない。24年度までに延べ194校で開催し、参加した生徒は1万9,777人になった。25年度になって開催した3校で266人が参加し、10月23日、2万43人に達した。

薬物教室の会場を出る子どもらに、「ありがとう。勉強ガンバレヨ」と声をかける。握手を求められたり、ハイタッチしたりする子もいる。時には、女の子が「可愛い」と、声をかけてくれる。感想文には、子どもらの気付きと心の声があふれている。
「一度でも乱用になり、治す薬はない」、「一度やると、依存症になる」、「家族、学校、地域に迷惑をかける」
我がクラブは独自の取り組みとして、感想文に対する礼状を出している。礼状には、感想文に記された素直な感想やユニークな意見などをA4・1枚にまとめて添える。次のような効果を期待し、学校側には6年生全員にコピーして渡してくれるようにお願いしている。
①礼状に自分の文書を取り上げられたら、単純にうれしい
②同じ話を聞き、同じDVDや断り方の寸劇を見ても、子どもによって捉え方が違い、気付きになる
③家で保護者にも見せてくれたら、薬物の怖さに対する認識を共有できる
④中学、高校、大学に進学、社会人になって読み直す機会があれば、薬物の恐ろしさを思い起こせる
15年もやっていると薬物乱用防止教室の物語が紡がれる。教室の後で合唱を披露し、感謝を表現してくれる学校が2校ある。親しくなった校長・教頭も多い。小生は87歳、校長は50代。父親のように思ってくれる。新型コロナが流行した時は、子どもらは各クラスに備え付けの大型テレビを見て学習。講師が、放送室から話した。

小生は子どもが好きで、学校の先生になろうと考えていた。大学生の時、教員免許試験に落ち、希望がかなわなかった。新聞記者になった。今、薬物教室で教壇に立ち、夢が実現した。教室のシナリオを常に練り直す。生涯修業。薬物乱用防止教室は、元気で過ごせる良薬にもなっている。
我がクラブには12人の認定講師がいる。各学校を割り当てて担当してもらっている。クラブの総力戦が、2万人を実現した。
出生率が低く、少子化は加速している。子どもは、地域の宝、国の宝・財産だ。ライオンズクラブの奉仕活動の根幹は、青少年の健全育成。宝物を、薬物に汚染させてはならない。
(元会長/1998年入会/87歳)
2025.11更新

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