取材リポート 小さくとも確かな平和活動
こどもライオンズ食堂

小さくとも確かな平和活動 こどもライオンズ食堂
夏休み中のこども食堂で行われる自然体験

夏休みの平日、木更津市内では、子どもたちの明るい声が毎日響いている。木更津ASEAN東京ベイ ライオンズクラブ(泉水俊江会長/46人)が、NPO法人レイラインのソフィアキッズ学童クラブと協働して実施する「こどもライオンズ食堂かずさや」である。夏休み中は1日平均30人の子どもが参加し、温かい昼食の提供に加え、学習支援、食育、無料歯科健診、自然体験、サマーキャンプ、SDGsを学ぶ活動など、多彩なプログラムを展開している。

活動は夏休みだけに限らない。毎月第4土曜日には地域の誰もが参加できるこども食堂を開催し、冬休み、春休みにも食事と体験活動を実施している。さらに、毎週のフードパントリーでは、食料を必要とする家庭への配布や配達を継続している。これらを合わせると、年間約100日に及ぶ地域奉仕活動となる。

昼食の提供に加えて学習支援も行われる

活動の背景には、学校給食のない長期休暇中の食の課題、保護者の就労に伴う子どもの孤立、学習や体験機会の格差がある。本事業は、食事、学び、体験、人とのつながりを一体として届け、子どもたちに「あなたは大切な存在である」「ここにいてよい」と伝えることを目的としている。努力を認められ、仲間の役に立ち、安心できる大人と出会う経験が、「自分にもできる」「自分には価値がある」という自己肯定感を育てるのだ。

この活動で、ライオンズの果たす役割は大きい。会員が地域企業を訪ね、活動の趣旨を丁寧に説明しながら支援企業を開拓してきた。食材や物資、資金面の協力をつなぐだけでなく、会員自身も現場に立つ。無料歯科健診ではクラブ所属の歯科医師が専門性を生かして奉仕し、学習支援では会員が宿題や学びを支える。フードパントリーの配達も有志会員が担い、支援を必要とする家庭へ直接届けている。地域とのネットワーク、会員の職業的専門性、そして行動力こそが、この事業を支えるライオンズの強みである。

予防歯科指導と無料歯科健診も実施

活動を継続するには、食材の確保、衛生管理、アレルギー対応、送迎、屋外活動時の安全管理など、多くの課題がある。そこでクラブとNPOが役割を明確にし、NPOの子育て支援の実践力と、ライオンズの地域連携力を組み合わせた。単に子どもを預かるのではなく、一人ひとりが主役になれるよう、学習、健康、自然、多文化交流を組み込み、小さな挑戦や成長を言葉にして認めることを大切にしている。

この取り組みは、昨年度まで木更津ライオンズクラブのクラブ支部の活動として進められてきた。しかし、会員の高齢化が進む中で、子ども支援や多文化共生に重点を置き、より機動的かつ継続的に活動する組織が必要となった。そこで今期、志を同じくする会員が結集し、「こども食堂を活動の柱とするクラブ」として木更津ASEAN東京ベイ ライオンズクラブが結成された。地域課題に即した奉仕を、次世代へつなぐための前向きな独立である。

SDGsポスターコンテストの表彰

活動を重ねる中で、年齢や国籍の異なる子ども同士が自然に助け合い、年上の子が年下の子に声をかける姿も見られるようになった。食事づくりや片付けを手伝い、「ありがとう」と言われる経験も、子どもたちの自信につながっている。保護者からは「安心して仕事に行ける」「温かい食事だけでなく、多様な体験がありがたい」「以前より子どもが自分から話すようになった」との声が寄せられている。また、支援企業からは、地域の子どものために継続して協力したいとの申し出があり、奉仕の輪は着実に広がっている。

平和とは、戦争がないことだけではない。空腹や孤独に苦しむ子どもがいないこと、国籍や文化、家庭環境の違いを越えて誰もが大切にされることも、平和の条件である。「こどもライオンズ食堂かずさや」は、目の前の一人を支え、自己肯定感と共生の心を育てる社会奉仕活動だ。一緒に食べ、学び、遊び、互いを認め合う日々の積み重ねこそが、小さくとも確かな平和を地域からつくっている。

2026.09更新(取材・文:ライオン誌日本語版編集長/廣瀬直樹<千葉県・浦安ライオンズクラブ>、写真提供:木更津ASEAN東京ベイ ライオンズクラブ)