取材リポート
ライオンズクエストが
1年目教員の必須研修に
335-A地区2リジョン1ゾーン(兵庫県尼崎市)
#青少年支援

コミュニケーション力や自分をコントロールする力など、生きていく上で重要な力を育むことを目指す青少年育成プログラム、ライオンズクエスト。ライオンズは教員を始めとする指導者にその活用法を習得し活用してもらうことで、子どもたちにプログラムを届けている。尼崎市では今年、採用1年目の教員の必須研修に初めてライオンズクエストが採用された。地道な普及活動を続けてきた地元ライオンズクラブにとって、大きく確かな一歩となった。
9月2日、尼崎市立教育総合センターで尼崎市教育委員会が主管する市内小中学校の初任者研修が行われ、必須研修としてライオンズクエストのワークショップが実施された。335-A地区(兵庫県東部)2リジョン1ゾーンの5クラブ(尼崎、尼崎南、尼崎琴の浦、尼崎武庫、尼崎そのだ)がスポンサーとなり実現したもので、尼崎南ライオンズクラブは60周年記念事業としても資金面を支援。335-A地区青少年健全育成委員会がワークショップの運営をサポートした。
午前9時から午後4時半までのスケジュールが組まれた研修には、採用1年目の教員77人が参加。参加者は3会場に分かれて、ライオンズクエスト認定講師の柴咲子講師、寺西勉講師、横田秀策講師の3人によるワークショップを受講した。

ライオンズクエストは子どもたちが生きていく上で必要なライフスキル(心理社会的能力)を高めるための総合的なプログラムで、就学前から中学生まで発達段階に合わせた9段階の指導者用ガイドが用意されている。学校の授業などでプログラムを活用するためには、ワークショップに参加して認定資格を持つ講師の指導を受ける必要がある。
ライオンズクラブは地域の子どもたちの健やかな成長を願ってプログラムの普及に取り組み、地域の学校や教育委員会、保護者会などへの働きかけや、LCIFのライオンズクエスト交付金を活用するなどしてワークショップの開催を支援。学校単位での実施や、教育委員会が希望者を募って開催するケースなど、それぞれの地域の実情に合わせて活動している。

ワークショップでは実際の教材を使いながら、プログラムの内容や構成を理解すると共に、さまざまな場面での活用方法を学ぶ。互いの距離を縮めて仲間作りをするためのゲームや、自分たちでクラスのルールを作る授業を体験しながら、明るく前向きな雰囲気作りや、効果的なグループワークの進め方、意見を言うことが苦手な子が発言しやすくする工夫などの具体的な指導手法を、経験豊富な認定講師から伝授される。ワークショップの後半には教材を読み込んで授業を組み立て、受講者による模擬授業も行われる。
尼崎市内では10年余り前から、尼崎南ライオンズクラブなどが市内の学校や幼稚園でワークショップを実施し、昨年度からは2リジョン1ゾーンの5クラブ合同で支援するようになった。今回、初任者全員を対象にした必須研修に採用されたのは、昨年度行った小学校でのワークショップを見た教育委員会の指導主事が、初任者研修に取り入れてはどうかと推薦したのがきっかけだった。
ただ座って考えるだけでなく、体も動かして楽しみながらプログラムを学ぶのがライオンズクエスト・ワークショップの特徴。受講者は生き生きとした表情で取り組んでいる
小学校でのワークショップの印象を、指導主事は次のように話す。
「先生方は休み時間も熱心に意見を交わしていましたし、子どもたち同士の人間関係の築き方など、学級経営につながる内容で、初任者に必要な力を付けることができると感じました。その小学校には精神的に落ち込んでいる先生がいて気にかけていたのですが、ワークショップの時はとても明るい笑顔で取り組んでいました。その後は順調に学校に出ていると聞き、他の要因もあるかもしれませんが、講師や他の先生方とコミュニケーションが取れたことが良かったのだろうと思いました」
ライオンズ側の担当者として準備に当たった土田壮太郎リジョン・チェアパーソン(尼崎南ライオンズクラブ)は、初任者研修でのワークショップ実施に大きな期待を寄せている。
「4月からいくつかの研修を重ねているとはいえ、まだ受講者間の仲が深まっているとは言えません。ワークショップによって、この仲を1日で一気に縮められる集団作りを体験し、『子どもたちにも同じ思いをさせたい』と感じてもらえたら、その後の学級経営に良い影響を与えられると考えています。今回の実施により改めて教育委員会に評価されれば、毎年初任者研修としてライオンズクエストが取り入れられる可能性があります」

2リジョン1ゾーンが合同でライオンズクエスト普及に取り組んでいるように、335-A地区青少年健全育成委員会はゾーン合同での普及を推進している。その狙いを同委員会の北川昌幸委員長はこう説明する。
「ライオンズクエストは子どもたちの成長に役立つプログラムで、地域にある多くの学校で活用してほしいのですが、いくら熱心なクラブであっても単独での活動には限りがあり、継続するのは容易ではありません。同じ地域で活動するゾーン内のクラブが協力し合うことで、学校や教育委員会に効果的にアプローチし、より多くの子どもたちにライオンズクエストの恩恵を届けることができるようになると考えています」
335-A地区には3年前、青少年健全育成委員会の委員経験者や、普及活動の経験者を始め、プログラムに興味を持つ会員が集う「ライオンズクエスト同好会」が発足した。プログラムの良さを実感して熱意を燃やすメンバーが、それぞれの経験を生かそうと、50人以上が加わっている。この日のワークショップにも青少年健全育成委員会に加えて同好会のメンバーも参加。尼崎南ライオンズクラブのメンバーらと共に運営をサポートし、ワークショップの様子を見守っていた。

地区青少年健全育成委員会の委員長を務めた経験を持つ土田リジョン・チェアパーソンは、普及活動を進めていく上で、ライオンズメンバーが実際にワークショップを見ることが重要だと考えている。
「夏休みにワークショップを受けた先生から、『ためになったので2学期の授業で使っていきたい。ついては公開授業をやるのでライオンズの皆さんに見に来てほしい』と言われたことがありました。こうした機会を通じて、ライオンズクエストが教育現場でどのように生かされているかを直接見ることは、私たちにとって非常に励みになりますし、プログラムを広げていく上で大きな力になると思います」
地域の子どもたちに一生を通じて役に立つライフスキルを養うために、ライオンズの懸命な努力は続く。
2025.11更新(取材/河村智子)

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